これから農業を始める方にとって、経営開始資金は農業の経営に役立つ制度です。
国の支援制度とはいえ、誰もが交付を受けられるわけではありません。
今回は、2022年度から始まった新規就農者育成総合対策の3本柱の一つである「経営開始資金」について解説します。
記事を最後まで読めば、経営開始資金の要件や申請方法などを把握できます。
経営開始資金とは?
経営開始資金とは、農業経営を始めた新規就農者を対象に資金を交付する制度です。
2022年度に、農業次世代人材投資資金の経営開始型から「経営開始資金」へ名前が変更されました。
経営開始資金の交付を受けるためには、新規就業者育成総合対策実施要綱の規定に定められた交付対象者の要件を満たす必要があります。
夫婦型は1.5人分の資金が交付される
経営開始資金は夫婦が一緒に就農する場合にも利用できる制度です。
新規就農者のうち、夫婦で申請を出す場合は1.5人分の交付を受けられます。
夫婦で交付を受けられることから、「夫婦型」とも呼ばれています。
夫婦型に該当するケースは次のとおりです。
- 家族経営協定を結んでいる
- 経営資源を共有している
- 共同経営者であることが明確に示せる
経営開始資金の交付対象者の要件と受給金額
経営開始資金は新規就農者を対象にした制度ですが、交付を受けるには一定の要件を満たさなければなりません。
親元就農者であっても要件を全て満たしていれば、経営開始資金の交付を受けられます。
経営開始資金の交付対象者の要件
経営開始資金の交付対象者の主な要件は次のとおりです。
- 就農時の年齢が50歳未満の認定新規就農者である
- 申請者は独立・自営就農である
- 親元就農者の場合は就農後5年以内に親から農業経営を継承し、新規参入者と同等の経営リスクが考えられると市町村に認められている
- 人・農地プランに中心経営体と認識されている、または農地中間管理機構(農地バンク)から農地を借りている
- 国から生活費の支給や雇用就農資金に該当する給付を受けたことがない
- 前年の世帯全体の所得が600万円以下である
認定新規就農者の対象者は次のとおりです。
- 18歳以上45歳未満の青年
- 特定の知識や技能を持つ65歳未満の中高年齢者
- 上記の2項目に該当する者が役員の過半数を占めている農業法人
経営開始資金は新規就農者だけでなく、一部の親元就農者も対象になります。
ただし、新規作目の導入や新規事業の開始など、新規参入者と同等の経営リスクがあると市町村に認められた場合に限られるため注意が必要です。
人・農地プランとは、農業者の話し合いによって地域の中心的な役割を担う農業者(中心経営体)を決めて市町村が公表することを指します。
※参考:農林水産省|就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)
経営開始資金の受給金額
経営開始資金は年間で最大150万円を最長3年間交付されます。
150万円は一括で振り込まれるのではなく、150万円を12カ月に分割して毎月12.5万円が支払われます。
経営開始資金を申請する方法と必要書類
経営開始資金の交付を受けるためには、申請手順に沿って市町村に必要書類を提出しなければなりません。
経営開始資金の申請手順
経営開始資金の申請は、次に挙げる手順で行われます。
- 青年等就農計画に申請追加資料を添付して市町村に提出する
- 審査会に参加する
- 青年等就農計画の承認を受ける
- 交付申請書を提出する
- 資金が交付される
経営開始資金の申請には、青年等就農計画と申請追加資料の提出が必須です。
提出書類に不備があると受理されず、修正箇所がなくなるまで再提出を繰り返します。
提出書類が受理されると、申請者は市町村で開催される審査会に出席し面談を受けます。
市町村から承認を得られれば経営開始資金の交付申請を行い、承認から1カ月以内を目安に資金が交付されるのが一般的な申請の流れです。
申請追加資料の提出が必須
経営開始資金の申請に必要な書類は、青年等就農計画認定申請書と経営開始資金申請追加資料です。
青年等就農計画認定申請書には、就農開始から5年後の農業所得額や作付面積、生産量などの目標を詳細に記載する項目があります。
経営開始資金申請追加資料は、新規就業者育成総合対策実施要綱の規定に遵守した農業経営を行うことを記した誓約書です。
その他に次の添付書類が必要です。
- 収支計画
- 履歴書
- 離職票の原本
- 農業経営の開始時期を証明する書類
- 農地及び主要な機械・施設の一覧
- 通帳の写し
- 前年の世帯全員の所得を証明する書類(源泉徴収票、所得証明書など)
- 身分証明書(運転免許証、パスポートなど)
- 個人情報の同意書
- その他要件を満たすことを確認できる書類
市町村によって申請に必要な書類が異なる場合もあるため、申請前に市町村の公式ホームページや窓口で確認することをおすすめします。
経営開始資金の返還が必要な場合がある
経営開始資金の交付を受けても、新規就業者育成総合対策実施要綱の規定に違反した場合は資金の一部または全額の返還を求められることがあります。
交付の停止を受ける可能性があるケースは次のとおりです。
- 交付対象者の要件を満たさなくなった
- 青年等就農計画の実行に必要な作業を行わなかった
- 市町村が「適切な就農が行われていない」と判断を下した
- 理由もなく農業経営を停止または休止した
- 6カ月ごとの就農状況の報告を怠った
- 国への報告や立入調査への協力を拒んだ
経営開始資金の返還を求められるケースは、交付期間終了後に交付期間と同期間以上の農業経営を行わなかった場合と、虚偽の内容を申請した場合が挙げられます。
まとめ
経営開始資金は、農業に新規参入する人の経営リスクの負担を軽減できる制度です。
新規就業者育成総合対策の3本柱の一つである「就農準備資金」と合わせて申請することで、最大5年間資金を受給でき、より安定した農業経営を行う手助けとなるでしょう。
経営開始資金を賢く活用し、農業経営を成功させましょう。
コメント