「じゃがいもに栄養があるのかないのか分からない」という人も多いのではないでしょうか。
じゃがいもにはさまざまな栄養が含まれていますが、調理方法によって栄養成分を無駄にしてしまうこともあります。
この記事では、じゃがいもの特徴や歴史、栄養成分などを解説します。
じゃがいもの保存方法や調理時の注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
じゃがいもとはどんな食品?
肉じゃがやコロッケなど、じゃがいもは日本食に欠かせない食品の一つです。
ここでは、じゃがいもにはどのような特徴や歴史があるのか解説します。
じゃがいもとは?
じゃがいもは「馬鈴薯(ばれいしょ)」という別名があるナス科ナス属の食品です。
主成分がでんぷんのじゃがいもは糖質を多く含み、エネルギー補給に適しているため、米や麺類と同じ主食に分類されています。
じゃがいもは9月以降から春にかけて出荷されるのが一般的です。
春から初夏にかけて収穫されるじゃがいもを「新じゃが」と呼びます。
新じゃがはみずみずしく、皮が薄いため皮つきのまま調理してもおいしく味わうことができます。
じゃがいもの主な生産地
じゃがいもは全国で生産されています。
農林水産省が2022年に公表したじゃがいもの収穫量や出荷量の上位3位までのデータを表にまとめました。
都道府県 | 作付面積 | 収穫量 | 出荷量 |
北海道 | 4万8,500ヘクタール | 181万9,000トン | 161万4,000トン |
鹿児島県 | 3,880ヘクタール | 8万7,300トン | 8万500トン |
長崎県 | 2,250ヘクタール | 6万6,600トン | 5万8,100トン |
北海道は、じゃがいもの作付面積・収穫量・出荷量が全国1位です。
次いで2位が鹿児島県、3位が長崎県と続きます。
2位や3位と比較すると、北海道のじゃがいも生産量の規模が大きいことが分かります。
じゃがいもの歴史
じゃがいもの歴史は、17世紀初めにインドネシアのジャカルタから長崎に伝わったのが始まりとされています。
「ジャカルタから来たいも」という意味で「じゃがたらいも」と呼ばれるようになり、その後なまって、現在のように「じゃがいも」という呼び方に定着しました。
じゃがいもの代表格である「男爵」や「メークイン」は明治時代に入ってからアメリカ経由で日本に持ち込まれるようになりました。
じゃがいもの主な種類とさつまいもとの違い
じゃがいもは国内だけで約20種類あり、全世界で2,000種類を超える品種があるといわれています。
ここでは、代表的な4つの品種の特徴や、じゃがいもとさつまいもの違いを解説します。
男爵
男爵は、日本で生産されるじゃがいもの起源とされる品種です。
表面はゴツゴツしており、芽が深い特徴があります。
形状は丸く、果肉は白色です。
でんぷんの割合が多く、加熱するとほくほくとした食感を味わえるため、粉ふきいもやマッシュポテトなどの料理に向いています。
メークイン
メークインは、イギリス原産の品種です。
日本では、男爵と並び2大品種として知られています。
メークインは男爵と比べて表面がなめらかで、芽は浅い傾向にあります。
長卵形で、果肉は黄白色です。
煮崩れしにくい特徴があることから、肉じゃがやシチューなどの煮込み料理におすすめです。
トヨシロ
トヨシロは、ポテトチップスの原料に用いられている品種です。
一般家庭に流通することはほとんどないため、知名度はそれほど高くありません。
男爵と似た丸形ですが、果肉はやや黄みがかった白色です。
ほくほくした食感を活かすならコロッケに、果肉の白さを活かすならポテトサラダにするとよいでしょう。
インカのめざめ
インカのめざめは、南アメリカのアンデス地方原産の品種です。
日本に持ち込まれた後、北海道の土壌に合わせて改良されました。
皮は黄色で、果肉はオレンジに近い濃い黄色です。
じゃがいもでありながら、ナッツや栗の風味に似ているといわれています。
油との相性がよいため、カレーやシチューなどの洋風の煮込み料理におすすめです。
「じゃがいも」と「さつまいも」の違いは?
「じゃがいも」と「さつまいも」の概要を表にまとめました。
属性 | 原産地 | 耐寒性 | 主な生産地 | 収穫時期 | |
じゃがいも | ナス科ナス属 | 南アメリカ | 強い | 北海道 長崎 鹿児島 | 9月以降 初夏:新じゃが |
さつまいも | ヒルガオ科サツマイモ属 | 中央アメリカ | 弱い | 鹿児島 茨城 熊本 | 11月頃 |
さつまいもは、中国から琉球(沖縄)を経由して薩摩地方(鹿児島)で生産されるようになり、「さつまいも」と呼ばれるようになりました。
じゃがいもと同じ「いも類」に分類されていますが、属性や原産地、収穫時期は異なります。
じゃがいもは寒さに強いため、寒冷地の北海道でも生産が可能です。
一方のさつまいもは寒さに弱いので、温暖な気候で生産される傾向にあります。
じゃがいものカロリーと栄養成分
「じゃがいもには栄養がないのでは?」と考える人も少なくありません。
しかし、じゃがいもには体の健康維持に必要な栄養成分が多く含まれています。
ここでは、じゃがいものカロリーと主な栄養成分について解説します。
栄養成分表で見る「じゃがいも」の栄養成分
文部科学省が2023年に更新した栄養成分表の「日本食品標準成分表」によると、生のじゃがいも100gに含まれるカロリーと栄養成分は次のとおりです。
エネルギー | 213kcal |
たんぱく質 | 1.8g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 15.9g |
食物繊維 | 9.8g |
カリウム | 420mg |
カルシウム | 4mg |
マグネシウム | 19mg |
リン | 46mg |
鉄 | 1.0mg |
ビタミンC | 28mg |
生のじゃがいもには食物繊維やカリウム、ビタミンCが豊富に含まれていることが分かります。
それぞれの栄養成分の役割や期待される効果を見てみましょう。
じゃがいもの栄養①食物繊維
食物繊維は、五大栄養素に次いで体の健康維持に大切な「第六の栄養素」として知られています。
五大栄養素とは、たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルの5つの栄養素のことです。
食物繊維はほかの栄養素と比べて、体内で消化吸収されたりエネルギー源にされたりすることはありませんが、体の健康維持に欠かせない栄養素の一つです。
食物繊維は大きく分けて「水溶性」と「不溶性」の2種類があります。
それぞれの違いは次の表のとおりです。
種類 | 水の溶けやすさ | 期待される効果 |
水溶性 | 溶けやすい | 食後の血糖値上昇の緩和血中コレステロール値の低下 高血圧の予防 |
不溶性 | 溶けにくい | 便のカサ増し腸内の有害物質の吸着・排出 |
生のじゃがいもの食物繊維は100gあたり9.8gで、生のごぼう(5.7g)よりも多く含まれています。
食物繊維が豊富なじゃがいもを食べることで、高血圧・糖尿病などの生活習慣病の予防や腸内環境の改善が期待できます。
じゃがいもの栄養②カリウム
カリウムはミネラルの一種で、余分なナトリウムを体外に排出する作用がある栄養素です。
カリウムを摂取すれば、食事で塩分を摂りすぎてしまっても腎臓での吸収を抑制して体外へ排出してくれるため、体内に余分なナトリウムが取り込まれる心配がありません。
また、塩分の摂りすぎによって引き起こされる高血圧やむくみの予防につながります。
カリウムは水に溶けやすい性質があるので、スープや味噌汁などの汁物の具材にしたり蒸したりする調理法がおすすめです。
じゃがいもの栄養③ビタミンC
ビタミンCはビタミンの一種で、抗酸化作用がある栄養素です。
抗酸化作用とは、老化や免疫機能を低下させる原因とされる「活性酸素」を抑制したり排除したりする働きのことです。
ビタミンCは免疫機能の維持をはじめ、シミ・くすみの予防やコラーゲン生成をサポートするなどの皮膚の健康維持に役立つ効果が期待されています。
じゃがいもに含まれるビタミンCは28㎎で、レモン(100㎎)の3分の1を占めています。
じゃがいもの選び方と適切な保存方法
じゃがいも全般に共通する正しい選び方や保存方法があります。
じゃがいもを選ぶときや保存する際は、以下に挙げる方法を参考にしてみてください。
ふっくらした形で芽が出ていないものを選ぶ
じゃがいもは、できるだけふっくらした形のものを選びます。
新鮮なじゃがいもほど皮は薄く、表面がなめらかでしっかりとした硬さがあります。
皮がシワシワでしなびているものや果肉が柔らかいものは古く、味が落ちている可能性があるので選ぶのは避けましょう。
じゃがいもは芽が出る直前が最も甘みが増すといわれています。
目が出る直前になるとでんぷんが糖化するため、甘みが増します。
ただし、芽が出てしまうと果肉に蓄えられた栄養分が吸い取られてしまい、じゃがいもの味が落ちてしまいます。
じゃがいもを選ぶ際は、芽が出ていないものを選びましょう。
じゃがいもは風通しのよい冷暗所で保存する
じゃがいもの保存に適した環境は風通しがよく、直射日光が当たらない冷暗所です。
じゃがいもは5度前後の場所での保存に適しているため、風通しのよい涼しい場所で保存しましょう。
直射日光が当たる場所で保管すると、皮が緑色に変色する「緑化」が進んでしまいます。
緑化すると見た目が悪くなるだけでなく、味も落ちるため直射日光が当たらない冷暗所での保存がおすすめです。
ただし、冷蔵庫で保存すると低温障害が起こりやすくなります。
新じゃがは水分を多く含んでいるため、一般的なじゃがいもに比べて長期保存には向いていません。
新じゃがは、できるだけ早く使い切るようにしましょう。
じゃがいもを調理する際の注意点
じゃがいもを調理する際には、いくつか気をつけるべき注意点があります。
とくに、緑化した皮や芽には毒素があるため、調理前にしっかり取り除くことが大切です。
以下に挙げる注意点に気をつけて調理すれば、じゃがいもをおいしく味わうことができるでしょう。
じゃがいもの毒を取り除いておく
じゃがいもは、毒を取り除いてから調理する必要があります。
じゃがいもの芽や緑化した皮には「ソラニン」や「チャコニン」と呼ばれる毒素が含まれています。
芽や緑化した皮が残ったじゃがいもを食べると食中毒を起こす場合があるので、じゃがいもを選ぶときはもちろん、買い置きしているじゃがいもを使用する際にも注意が必要です。
じゃがいもは芽や芽のまわり、緑化した皮をしっかり取り除いてから調理しましょう。
じゃがいもを食べすぎると太る可能性がある
じゃがいもを食べすぎた場合、カロリーの過剰摂取につながる場合があります。
とくに、フライドポテトやコロッケなどの油で揚げた料理は高カロリーになりやすいため、食べすぎると1日に必要なカロリーをオーバーする恐れがあります。
じゃがいもは炭水化物を多く含むため、キャベツやきゅうりなどの野菜の代わりにはなりません。
炭水化物は体の健康維持に必要なエネルギー源になりますが、多く摂りすぎると太る可能性が高まるので調理方法や摂取量に気をつけましょう。
じゃがいもは蒸す・煮ると栄養を逃さずに食べられる
じゃがいもは、揚げる・炒める・煮る・蒸すなどさまざまな調理方法で味わえる食品です。
水に溶けやすいカリウムやビタミンC、水溶性食物繊維を効率よく摂取するなら、調理方法を工夫する必要があります。
じゃがいもの栄養をできるだけ逃さずに摂取したい場合は、蒸す・煮る方法がおすすめです。
煮込み料理の場合は煮汁に栄養素が溶け出るため、汁まで飲むことでじゃがいもの栄養を余すことなく摂取できます。
皮に多く含まれる栄養素を効率よく摂取するなら、皮つきのまま調理するとよいでしょう。
まとめ
じゃがいもは世界に2,000種類を超える品種があり、国内で流通している品種は約20種類です。
体の健康維持に不可欠な食物繊維やカリウム、ビタミンCなどの栄養素が豊富に含まれている上に、肉じゃが・コロッケ・ポテトサラダなどの家庭料理からポテトチップスまで幅広い用途で用いられています。
寒さに強く、全国どこでも生産しやすいため、これから農業を始めたい人におすすめです。
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