じゃがいもの育て方を間違えると、大きく育たなかったり褐変したり空洞化したりする場合があります。
事前にじゃがいもの栽培方法を把握しておけば、じゃがいもの栽培で失敗するのを避けられるでしょう。
今回は、じゃがいもの具体的な育て方や栽培時に意識しておきたいポイント、注意点について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
じゃがいもを植えるタイミングと育て方
数ある農作物のなかでも、じゃがいもは栽培の手間がかからない野菜として知られています。
じゃがいもを植える時期はおもに春と秋の年2回あり、年間を通してじゃがいもの栽培が可能です。
一般的に、春に植えることを「春植え」といい、秋に植えるのを「秋植え」と呼びます。
まずは、それぞれの特徴とおすすめの人を確認してみましょう。
春植え
春植えは3月~4月中旬にかけてじゃがいもを植える栽培方法です。
じゃがいもを植える地域によって春植えの時期は異なります。
たとえば、じゃがいもの名産地の北海道では4月~5月に種いもを植えて8月~10月にかけて収穫されます。
九州では1~3月に種いもを植え、5月~7月に収穫するのが一般的です。
春植えの特徴は、秋植えに比べて植え付け時期が長いことです。
気候は穏やかで植え付けした種いもが腐りにくいことも特徴の1つです。
日照時間が長いので、じゃがいもの収穫量が多い傾向にあります。
春植えに対応している品種も多いため、好みのじゃがいもを育てられるでしょう。
また、春植えは種いもの管理がしやすく、日照時間の長さから十分な収穫量が期待できることから初心者におすすめです。
秋植え
秋植えは8月下旬~9月にじゃがいもを植える栽培方法です。
北海道をはじめとする寒冷地では寒さが厳しくなり、じゃがいもの栽培に適していないため秋植えはしないのがセオリーです。
九州では9月に種いもを植え、11月~12月にじゃがいもを収穫します。
温暖な気候の九州では、10月~12月に種いもを植えて2月~4月にかけて収穫する冬作も行われています。
秋植えの特徴は種いもの植え付け期間が短く、栽培できる地域が限られていることです。
また、地中に埋めた種いもは夏から秋の暑さで腐りやすくなるので、春植えよりも栽培が難しいといわれています。
このように秋植えは栽培の難易度が高いことから、中・上級者におすすめです。
じゃがいもはプランターや袋栽培ができる
じゃがいもの育て方として、プランター栽培と袋栽培の2つがあります。
プランター栽培とは、鉢よりも大きい長方形の形状をしたプラスチック製の容器を使って育てる方法です。
袋栽培は通気性のある袋を用いて育てる方法です。
家庭菜園でじゃがいもを育てる場合は、プランターや袋を使用して栽培を始めるとよいでしょう。
じゃがいもの栽培に必要な準備
じゃがいもの育て方を解説する前に、植え付けに必要な準備をしておかなければなりません。
ここでは、じゃがいもの栽培に必要なものと種いもの下準備について解説します。
必要なもの
じゃがいもの栽培に必要なものは以下のとおりです。
- 種いも
- 野菜用培養土
- プランターもしくは栽培に適した袋
- 鉢底石
- 小型シャベル
- 化成肥料
- 園芸用ハサミ
- じょうろ
種いもは市販されているものを用意します。
じゃがいもの栽培が初めての人は、野菜専用の培養土を使用するとよいでしょう。
プランター栽培をする場合は、深さ30㎝以上の長方形のものを準備しておきます。
袋栽培なら、土嚢袋か培養土の袋でも構いません。
種いもの用意
種いもはホームセンターや園芸店で販売されているものを準備します。
スーパーで販売されているじゃがいもを種いもとして利用するのも可能ですが、あまりおすすめできません。
なぜなら、食用のじゃがいもがアブラムシを媒介としたウイルス病に感染していた場合、栽培するじゃがいもに感染する可能性があるからです。
市販されている種いもを用意したら、芽出しの作業から始めていきます。
芽出しとは、種いもから芽が出ることを指します。
芽出しは植え付けの2~3週間前から始め、室温10~20℃で日当たりのよい明るい場所に置いておきましょう。
種いもに芽が出たら、30~40gを目安に出ている芽が均等に分かれるように切り分けていきます。
切り分けた種いもは風通しのよい場所で2~3日程度陰干しにしておき、切り口を乾燥させます。
高温多湿の場所に種いもを置くと腐る可能性があるので注意しましょう。
種いもの断面に草木灰や切り口処理剤をまぶす場合は、切り口を乾燥させずに植え付け作業に移れます。
じゃがいもの育て方
ここからは、じゃがいもの育て方の手順を解説します。
全体の流れは次のとおりです。
1.土づくり |
2.植え付け |
3.芽かき |
4.土寄せ・追肥(1回目) |
5.病害虫の対策 |
6.土寄せ・追肥(2回目) |
7.花摘み |
8.収穫・貯蔵 |
1.土づくり
スムーズに種いもを植えるためには、植え付けをする前に土壌の準備をしておきましょう。
じゃがいもの栽培に適した土壌の酸度(pH)は5.0~6.0といわれています。
石灰を入れすぎるとpH7.0を超えて病気に感染しやすくなる恐れがあるので、土壌の酸度を意識した土づくりが必要です。
野菜専用の培養土には野菜の栽培に必要な成分や酸度が調整されているため、何も混ぜずに使用することをおすすめします。
水はけが悪い土壌をつくってしまうと、地中が常に湿った状態になって種いもが腐りやすくなるので注意しましょう。
2.植え付け
土壌の用意ができたら、種いもを植え付けしていきます。
ここでは、プランター栽培と袋栽培のそれぞれの方法を紹介します。
プランター栽培の場合
プランター栽培では30㎝以上の深さのあるプランターの用意が必須です。
じゃがいもは地上に向かって芽を出すため、十分な深さがないと生長したじゃがいもが直射日光に当たり緑化する恐れがあります。
プランターの底に鉢底石を敷き詰め、野菜用の培養土を半分の高さより少なめに入れておき、種いもは断面を下に向けて培養土に植え付けしていきます。
複数の種いもを植え付ける場合は種いも同士の芽が絡みつかないように、種いも同士の間隔を30㎝以上離すことが重要です。
種いもの上に土を5cm以上被せたときにプランターの半分の高さになるように調整しておきましょう。
植え付けしたプランターを日当たりや風通しのよい場所に置くと、じゃがいもは大きく育ってくれます。
袋栽培の場合
培養土が入った袋を使用する場合の手順を解説します。
まずは袋の底から10㎝の高さまで30~40カ所の穴を開け、袋の口は土の高さまで折り曲げておきます。
培養土に肥料が入っていない場合は袋から培養土を取り出し、「赤玉土:腐葉土:バーミキュライト=7:2:1」の配合で肥料を土と混ぜ合わせます。
袋に肥料を混ぜた土を戻し、種いもを埋めるための穴を開けて種いもを植え付け、5~8㎝程度の土で覆いましょう。
植え付け可能な種いもの数は、土15Lに対して1個までです。
土25Lの場合は1~2個まで植え付けできます。
ただし、多く植え付けるとじゃがいも同士が栄養を取り合って小さく育ってしまいます。
じゃがいもを大きく育てたい場合は植え付け可能な個数を守りましょう。
3.芽かき
芽かきとは、植え付けから20~30日後に種いもから出た複数の芽のうち、1つ以外の芽を取り除く作業を指します。
芽かきを行う目的は不要な芽を減らし、栄養を多く与えられる環境をつくってじゃがいもを大きく育てるためです。
芽かきは園芸用のハサミを使用して種いもを引き抜かないように注意しながら不要な芽を株元近くから切断します。
じゃがいもを大きく育てたい場合は芽かきを忘れずに行いましょう。
じゃがいもの育て方のポイント1:芽かきで大きく育てよう
芽は地上に出ているものだけでなく、地中にも「ストロン」と呼ばれる脇芽も伸びており、じゃがいもはこのストロンの先端で作られます。
ストロンは地上に出た芽の数に比例して増えるため、地上の芽が多すぎるとストロンも増えてしまい、じゃがいも同士が栄養を取り合って小さなじゃがいもになってしまいます。
そのため、じゃがいもを大きく育てたい場合は芽かきで生育がよい芽を残しましょう。
4.土寄せ・追肥(1回目)
芽かきを終えた後に、1回目の土寄せ・追肥を行います。
土寄せとは、株元に土を5cmほど高く盛る作業をいいます。
追肥は肥料を土に足すことです。
土に肥料を混ぜてから土寄せをすると、じゃがいもの生長に効果的です。
じゃがいもの育て方のポイント2:土寄せ・追肥
土寄せ・追肥は、芽かきと同じタイミングで行うのがポイントです。
肥料入りの培養土を使用しない場合は追肥としてカリ(カリウム)を使用します。
カリを土に混ぜると良質なデンプンが生成されやすく、おいしいじゃがいもが作れるとされています。
5.病害虫の対策
じゃがいもの栽培にはアブラムシ対策が必要です。
アブラムシが発生すると、じゃがいもの葉がモザイクのような模様になる「モザイク病」を発症してしまいます。
また、じゃがいもに多い病気として「そうか病」があります。
そうか病とは、葉が黒くなり、じゃがいもの表面にかさぶたのようなものが形成される病気です。
原因として、連作や未熟な堆肥、アルカリ性の資材の使用などが挙げられます。
病原菌が雨に流されて土壌に残ると、地中のじゃがいもが腐りやすくなるのでしっかり対策しておくことが大切です。
じゃがいもの育て方のポイント3:病害虫の対策は忘れずに
アブラムシは多湿の場所を好む傾向があるため、風通しのよい環境をつくることが対策につながります。
また、害虫や幼虫、卵を見つけたら放置せずに捕殺しましょう。
害虫対策として、天然成分でつくられている駆除剤をまくのも効果的です。
6.土寄せ・追肥(2回目)
種いもの植え付けから2カ月後に2回目の土寄せ・追肥を行います。
2回目の土寄せ・追肥のタイミングは、草丈が30㎝程度に生長して花が咲き始めた頃です。
肥料入りの培養土もしくは肥料を混ぜた土を株元に丁寧に寄せましょう。
土寄せをしないと生長したじゃがいもが地上に露出し、日に当たって緑化してしまいます。
緑化とは、ソラニンと呼ばれる有害物質が生成され、じゃがいもが緑に変色することです。
緑化したじゃがいもを食べると食中毒を起こすため、土寄せを行い緑化を防ぎましょう。
7.花摘み
花摘みとは、花を摘み取る作業を指します。じゃがいもは品種によって白や薄いピンク、淡い紫などの花を咲かせます。
花を咲かせて鑑賞を楽しむという方法もありますが、花が咲く際にじゃがいもに取り込まれるはずの栄養が奪われてしまうため、大きく育てたい場合は花摘みを忘れずに行いましょう。
じゃがいもの育て方のポイント4:花は早めに摘んでおく
花が生長するほど、じゃがいもの栄養は取られてしまいます。
花が咲いた後は子孫を残す目的で種をつくり始めるため、花摘みをせずに放置すれば多くの栄養が花に奪い取られてしまうでしょう。
花が咲き始めたら、早めに摘み取ることをおすすめします。
8.収穫・貯蔵
収穫のタイミングは葉や茎が枯れ始めた時期です。
じゃがいもを収穫する際は、梅雨前の晴れた日を選びます。
当日だけでなく、前日も晴れている日に収穫するのがおすすめです。
連日晴れた日を選ぶ理由は、土が乾いているときに収穫しなければ保存中にじゃがいもが腐りやすくなるからです。
収穫後は土を払い落とし、風通しのよい場所で1時間程度乾燥させてから冷暗所で保管しましょう。
じゃがいもの育て方のポイント5:収穫時はじゃがいもを傷つけないように
じゃがいもを収穫する際のポイントは、表面を傷つけないように株元から20㎝以上離れた場所にスコップを入れて掘り返すことです。
じゃがいもの表面を傷付けてしまうと、腐りやすくなるので注意が必要です。
掘り返した際にじゃがいもが小さい場合はそのまま土へ戻し、日を改めて収穫するとよいでしょう。
収穫時は土の中にじゃがいもが残っていないことを確認しておきましょう。
まとめ
じゃがいもの育て方は植える時期や栽培環境によって異なります。
秋植えよりも春植えのほうが手間はかからず初心者でもじゃがいもを育てやすいことから、じゃがいもの栽培が初めての方は春植えがおすすめです。
畑でじゃがいもの栽培をする前に、プランター栽培や袋栽培などの手軽な方法から始めてみましょう。
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