じゃがいもの連作障害の原因・症状や具体的な対策を解説
じゃがいもの栽培を始める際はどのような原因で連作障害が起きるのか、連作障害によってどのような症状が出るのかを把握しておくことが大切です。
今回は、じゃがいもの連作障害の原因や主な症状、対策について詳しく解説します。
じゃがいもと相性が良い・悪い野菜も紹介しているため、最後までご覧ください。
じゃがいもの連作障害とは?
じゃがいもの連作障害とは何か、じゃがいもの基本情報とともに以下で解説します。
じゃがいもの基本情報をおさらい
まずは、じゃがいもの概要を表にまとめているため、おさらいしておきましょう。
科目 | ナス科ナス属 |
原産地 | 南アメリカ(アンデス山脈の高地) |
作型 | 春植え、秋植え |
栽培方法 | 露地、プランター、袋など |
収穫までにかかる期間 | 発芽後、80~100日程度 |
じゃがいもはナス科ナス属に分類されており、南アメリカのアンデス山脈の高地が原産の作物です。
そのため、寒冷地や栄養が少ないやせた土地でも育てられるため全国どこでも栽培が可能です。
じゃがいもを植える時期は地域によって異なりますが、一般的に3月~4月中旬に植える「春植え」と、8月下旬~9月に植える「秋植え」があります。
栽培方法は露地栽培の他に、プランターや袋でも栽培できるため、家庭菜園にもおすすめです。
じゃがいもは、塊茎といって地下茎が肥大化することで収穫できます。
じゃがいもは連作障害が起こる?
連作とは、同じ土壌で作物を育てることです。
連作障害は同じ科の作物を同じ土壌で作り続けることで質の悪い作物になることを指します。
とくにナス科の野菜は連作障害が出やすいといわれているため、じゃがいもを栽培する場合は連作障害に気をつける必要があります。
後ほど、じゃがいもと相性の悪い野菜、良い野菜を紹介しているため、作付けの際の参考にしてください。
連作障害のじゃがいもに見られる症状
連作障害が起きた場合、じゃがいもにはさまざまな症状が見られます。主な症状は大きく分けて次の2つがあります。
- 病害虫によって起こる症状
- 肥料によって起こる症状
それぞれどのような症状が出るのか確認しておきましょう。
病害虫によって起こる症状
同じ作物を連作すると土壌に含まれる栄養素のバランスが崩れ、病害虫の密度が高くなった結果、じゃがいもが病気にかかりやすくなります。
放置すれば、生育不良や収穫量の減少を引き起こしてしまうでしょう。
ここでは、主な病害虫として、青枯病・そうか病・モザイク病の3種類について解説します。
青枯病(あおがれびょう)
青枯病は、青枯病菌が原因で起こる病気です。
青枯病にかかったじゃがいもは日中に茎や葉がしおれ、夜間や曇りの日は一時的に回復するといった症状が繰り返されます。
症状は上の葉に出て、やがて株全体に広がっていきます。
青枯病の特徴は青みを残したまま枯れていくことです。
梅雨入り前から10月頃に発生しやすく、高温多湿の気候で青枯病が多く見られる傾向があります。
そうか病
そうか病は、ストレプトマイセス属菌と呼ばれる細菌が原因の病気です。
そうか病にかかったじゃがいもは、表皮にかさぶたや陥没跡のような症状が見られます。
症状が出ても味はほとんど変わりませんが外見を著しく損なうため、市場価値が下がってしまいます。
そうか病が発生しやすいのは土壌酸度(pH)が5.2以上、土壌内の温度20度以上の2つの条件がそろった場合です。
高温かつ乾燥しやすい気候のときに発生しやすいとされています。
モザイク病
モザイク病はアブラムシが媒介するウイルスが原因の病気です。
じゃがいもがモザイク病にかかると、名前にもあるとおりモザイク状の斑点が葉に現れたり、葉が細くなったりします。
モザイク病の怖さは、症状が株だけでなく作物全体に広がることです。
症状が進行することで、葉や茎を委縮させてしまいます。
肥料によって起こる症状
じゃがいもの連作障害は使用する肥料の種類によって起こる場合があります。
じゃがいもを連作した場合、生育に必要な栄養素を吸い上げるため土壌内の栄養バランスが崩れやすくなり、やせた土地になってしまいます。
じゃがいもにとって良い環境であっても、他の作物からすると栄養に偏りがある土壌のため質の低い作物になりやすいです。
じゃがいもが連作障害になる原因
じゃがいもが連作障害になる主な原因は、次の3つが挙げられます。
- 植物由来の毒素による生育阻害
- 病害虫による被害
- 土壌内の栄養素の過不足
それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
植物由来の毒素による生育阻害
じゃがいもが連作障害になる原因の一つは、自身が出す毒素による生育阻害です。
植物の中には、他の作物の生長を阻害する毒素を葉や根から出すものがあり、じゃがいもにもその特徴があります。
しかし、土壌中の毒素の濃度が高くなると、じゃがいも自身の生育にも悪影響が出て発芽を抑制する作用が働く場合があります。
近年、植物由来の毒素が連作障害の主要原因ではないかと言われるようになりました。
土壌内の栄養素の過不足
土壌内の栄養バランスの偏りも、じゃがいもが連作障害になる原因です。
じゃがいもを連作した場合、生長に必要な栄養素だけが土壌から吸い上げられるため、土壌中の栄養バランスに偏りが出てしまいます。
特定の栄養素が多く残ったり不足したりする状態になると土壌酸度が変化し、じゃがいもが育ちづらい土壌環境になるため連作障害が起きやすくなります。
病害虫による被害
じゃがいもの生長を阻害する病原菌や害虫による被害も、連作障害の原因です。
土壌内の微生物は病原菌が作物の根から侵入するのを防ぐ働きがあります。
しかし、じゃがいもの収穫後、土壌内に根が残ったままの状態で放置すると病原菌や害虫が根を栄養に繁殖してしまいます。
病原菌や害虫が増殖した土壌に再びじゃがいもを植えれば病原菌や害虫による被害が出やすくなるうえに、土壌全体に病気が広がってしまうでしょう。
結果的に、じゃがいもは連作障害を引き起こしてしまいます。
じゃがいもの連作障害を避けるための対策
じゃがいもの連作障害を避けるためには効果的な対策を行う必要があります。
じゃがいもの連作障害に有効とされる主な対策は次のとおりです。
- 土壌の回復を待つ
- 輪作をする
- 病害虫の発生を抑制する
- 土壌の診断結果をもとに土壌を作る
- 消毒をして土壌改良する
どのような対策があるのか知ったうえで、自分に合った方法を試してみてください。
土壌の回復を待つ
じゃがいもの連作障害の一般的な対策は、土壌が回復するのを待つことです。
そもそも連作障害は同じ土壌で同じ作物を作り続けることで起こります。
作物を植えない期間を設けることで、土壌内の栄養バランスは自然に戻っていきます。
土壌が回復したタイミングであれば、同じ作物を植えても問題ありません。
土壌を休ませる期間は育てる作物の種類によって異なります。
じゃがいもやナス科の野菜を植えた場合は2年待つ必要があります。
また、作物を作らない間は灌水(かんすい)を行うことが土壌を回復させるのに大切なポイントです。
灌水とは、一定期間水を溜めておくことです。
灌水すると、土壌に残留する病原菌や害虫を取り除くことができます。
輪作をする
多くの農家では輪作によって、じゃがいもの連作障害を防いでいます。
輪作とは、土壌をいくつかのブロックに分けて異なる科の作物をローテーションで栽培する方法です。
たとえば、A・B・Cの3つのブロックに分け、Aにじゃがいもやナス科の野菜を植え、Bには豆類を植え、Cにトウモロコシを植えたとします。
翌年はBにじゃがいもを植え、Cに豆類、Aにトウモロコシという順番で植える場所を変えていくのが輪作です。
3つ以上のブロックがあれば、前回じゃがいもを植えた場所で再び植えるまでに2年以上の期間を空けることができます。
じゃがいもの名産地で知られる北海道では、じゃがいもと同時に小麦や小豆、トウモロコシ、インゲンマメなどを輪作しています。
病害虫の発生を抑制する
連作障害の原因になる病害虫の発生を抑えることも対策になります。
ここでは、先述した青枯病・そうか病・モザイク病のそれぞれへの対策を確認しておきましょう。
青枯病に効果のある薬剤はなく、後述する土壌消毒を行っても効果はないとされています。
土壌消毒は地面から30㎝程度までに生息する病害虫に有効ですが、青枯病菌は80㎝程度の深さでも生息できるため土壌を消毒しただけでは発生を抑える対策にはなりません。
青枯病を予防するには、じゃがいもの収穫後に株ごと抜き取り、焼却処分することです。
そうか病は土壌酸度がアルカリ性に傾くと病気が進行するため、アルカリ性の性質がある石灰の使用は避けましょう。
モザイク病は媒介者のアブラムシが発生する前に薬剤を散布することで対策できます。
アブラムシが発生しやすい時期は4月~11月です。
また、種芋は病害感染のリスクが低い検査済種芋を選ぶことも連作障害の対策に有効です。
土壌の診断結果をもとに土壌を作る
じゃがいもが連作障害にならないための対策として、土壌診断を行うことが挙げられます。
土壌診断とは、土壌からサンプルを取って科学的な分析を行い、土壌に必要な肥料の種類や散布量などを診断する方法です。
土壌診断は、土壌内の栄養や微生物のバランスなど土壌の状態を把握するのに便利で、診断結果をもとに土壌づくりを行えば土壌の栄養バランスやpHを整えることができます。
土壌診断は専門業者へ依頼しましょう。
消毒をして土壌改良する
土壌の消毒もじゃがいもの連作障害の対策になります。
じゃがいもの収穫後に消毒をすることで、土壌に残った病害虫の駆除を行います。
消毒に使用されるのは農薬が一般的です。
農薬は安定した消毒効果があり、時間がかからないというメリットがあります。
農薬を使わない方法として、「太陽熱土壌消毒」や「寒起こし」も有効な手段です。
太陽熱土壌消毒は、酷暑期の太陽熱を利用して土壌を消毒する方法です。
寒起こしは天地返しした土壌を寒気にさらすことで土壌内の病害虫を死滅させます。
太陽熱土壌消毒と寒起こしによる方法は時間こそかかりますが、自然な環境を保つことができます。
じゃがいもと相性が悪い野菜・良い野菜
じゃがいもには相性が悪い野菜と良い野菜があります。
相性が悪い野菜 | ナス科の野菜(ナス・トマト・ピーマンなど)ウリ科の野菜(キュウリ・カボチャなど)アブラナ科の野菜(キャベツ) |
相性が良い野菜 | 豆類(ソラマメ・エンドウマメ・インゲンマメなど)セリ科(セロリ)その他(トウモロコシ・ブロッコリー・サトイモなど) |
相性が悪い野菜はじゃがいもの近くに植えたり、じゃがいもの作付け前後に栽培したりするのは避けましょう。
相性が良い野菜は、じゃがいもと一緒に植えたり交互に栽培したりするのに適しています。
それぞれどのような野菜があるのか紹介します。
じゃがいもと相性が悪い野菜
じゃがいもは他の作物の生育を阻害する毒素を持っています。
そのため、じゃがいもと同じナス科の野菜を一緒に植えたり続けて栽培したりするのに向いていません。
じゃがいもと相性が悪い野菜の例は次のとおりです。
- ナス
- トマト・プチトマト
- ピーマン
- カボチャ
- キュウリ
- キャベツなど
キュウリやカボチャなどのウリ科の野菜は浅く広く根を張るため、じゃがいもの生育不良の原因になりやすいです。
キャベツも相性が悪く、じゃがいもの生育を阻害します。
このように、じゃがいもは多くの夏野菜と相性が悪いことから、春は夏野菜、秋はじゃがいもというパターンの作付けは避けるようにしましょう。
じゃがいもと相性が良い野菜
じゃがいもと一緒に植えると生育が良くなる、病害虫が減るなどのメリットがある野菜も存在します。
そのような野菜のことを「コンパニオンプランツ」と呼びます。
じゃがいものコンパニオンプランツの例は次のとおりです。
- ソラマメ・エンドウマメ・インゲンマメなどの豆類
- セロリ
- サトイモ
- ブロッコリー
- トウモロコシ
- ネギなど
とくに、ネギとじゃがいもを交互に栽培することで、病害虫の予防や生長促進、ネズミ除けといったメリットが得られるといわれています。
まとめ
じゃがいもを同じ土壌で続けて植えると、連作障害を起こすおそれがあります。
対策として、じゃがいもと相性の良い野菜を一緒に植えたり、交互に植えたりするのがおすすめです。
時間をかけずに連作したい場合は、土壌診断の結果をもとに適切な肥料をまいて土壌の栄養バランスを改善する、土壌消毒を行って土壌改良するのも有効な手段です。
対策を参考に、じゃがいもの連作障害を回避しましょう。