じゃがいも農家は儲かると聞いたものの、本当に稼げるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
今回は、じゃがいも農家は儲かるのか、実際の年収はいくらなのか、じゃがいも農家だけで年収1,000万円を実現できるのかについて詳しく解説します。
農業でじゃがいもの栽培を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
じゃがいも農家の年収はどのくらい?
農業の中でもじゃがいも農家を選択した場合、どのくらいの年収が見込めるのでしょうか。
じゃがいも農家の年収をより分かりやすくするため、全職種の平均年収や農家全体の平均所得と比較してみましょう。
国税庁が発表した「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、1人当たりの平均年収は458万円。
全農業経営体の平均所得は個人と法人を合わせて125万円程度でした。
一方で、じゃがいも農家の平均年収は188万円で、農家全体の平均所得よりは高いものの、全職種の平均年収よりも270万円低い傾向にあります。
じゃがいも農家の平均年収は地域によっても異なります。
1戸当たりの年収は北海道が248万円程度、長崎県は114万円程度、鹿児島県は85万円程度です。
このように、じゃがいも農家の年収は地域によっても格差があることが分かります。
じゃがいもだけで年収1,000万円は無理?
年収1,000万円以上を稼いでいる農家は存在しますが、全体の1割程度といわれています。
実際に年収1,000万円稼いでいる農家がいるため、じゃがいも農家でも年収1,000万円を稼げる可能性はゼロとは言えないでしょう。
しかし先述した通り、じゃがいも農家の平均年収は188万円というのが現実です。
さらに、北海道以外の地域で農業を始めた場合は、年収100万円前後しか稼げません。
じゃがいも農家だけで年収1,000万円を稼ぐためには、北海道で広大な土地を確保したり、ライバル農家をしのぐ差別化戦略を立てたりするなど、相当な創意工夫をする必要があるでしょう。
じゃがいものみで売上1,000万円以上を稼ぐのは難しい理由
じゃがいものみで年収1,000万円を稼ぐには、それを上回る売り上げが必要です。
そもそも年収(=年間所得)は、売り上げが100%利益になるわけではありません。
以下の計算式のように、収入金額から必要経費を差し引いて残ったものが利益となり、年収と表せます。
所得金額=収入金額-必要経費
例えば、経費が400万円かかった場合は、最低でも1,400万円以上の売り上げが必要になります。
ただし、所得税なども発生するため、さらに大きな売り上げが必要です。
このように、じゃがいも農家だけで年収1,000万円を稼ぐ難しさがお分かりいただけるでしょう。
ここからは、年1,000万円稼ぐ難しさを深掘りしていきます。
北海道で大規模化しなければ1,000万円以上の利益は出せない
農林水産省が発表した「食品価格動向調査(野菜)」によると、2023年9月18日の週に販売されたじゃがいもの全国平均価格は1㎏406円でした。
1㎏406円を基に、1,000万円以上を売り上げるためには最低25t(トン)程度のじゃがいもを販売する必要があることが分かります。
ただし、売り物にならないじゃがいもが出る可能性を考えると、25t以上の生産量が必要になるでしょう。
同省の「令和4年産春植えばれいしょの作付面積、収穫量及び出荷量」によれば、作付面積10a(オール)当たりの収穫量は北海道で3.8tでした。
仮に、25t以上のじゃがいもを収穫するには66a(6,600㎡)程度の作付面積が必要です。
収穫量や作付面積の面から考えても、じゃがいも農家だけで年収1,000万円を稼ぐ難しさがこれらのデータから読み取れます。
出典:農林水産省「令和4年産春植えばれいしょの作付面積、収穫量及び出荷量」
じゃがいもの栽培には膨大なコストが発生する
じゃがいも農家に必要な起業資金は1,250万円程度とされています。
例えば、土地や機械、種いも、農薬、肥料などの経費が必要です。
他にも、ランニングコストとして毎月100万円以上の維持費もかかります。
準備が整い、じゃがいも農家としてデビューしても1年目から年収1,000万円を稼げる保証はありません。
農業全般に言えることですが、品質の高い農作物の栽培や新種の開発に時間や労力、コストをかけてこそ、その対価として大きな売り上げを上げることができるのです。
その覚悟がなければ、じゃがいもだけで年収1,000万円を稼ぐのは難しいでしょう。
自然災害・害獣被害による損害がある
台風や大雨で田畑が浸水すれば、作物は売り物にならなくなります。
山がすぐそばの土地でじゃがいもを栽培する場合、シカやイノシシなどに農作物をかじられたり掘り起こされたりするケースも多いでしょう。
じゃがいもに傷がつけば売り物にならないため、大きな損害を受けてしまいます。
じゃがいもに限らず、農作物は自然災害や害獣被害によって大きな損害を受けるリスクがあります。
さらに防護柵などの対策をする場合にコストや労力がかかることも、年収1,000万円を稼ぐのを難しくしている要因の一つと言えるでしょう。
自力で販売ルートを確保するのは大変
じゃがいもを販売するには、JA(農業協同組合)の直売所や道の駅、オンラインショップなどの方法があります。
例えば、JAの直売所の場合、出荷した全てのじゃがいもを買い取ってもらえますが、販売者の登録基準を満たさなければなりません。
また、20~40%程度の高い手数料を支払う必要があります。
このほかにも、食品関連企業と契約を結んだり、スーパーや飲食店へ卸したりする方法もありますが、すでに取引相手がいるため、差別化や価格面で魅力がなければ乗り換えてもらえないでしょう。
農業をする上でじゃがいもの専業で稼ぐのは非現実的!
結論を述べると、じゃがいも農家だけで年収1,000万円を稼ぐのは難しいでしょう。
じゃがいもの収穫は春と秋の年2回あります。
しかし、北海道のような寒冷地では春植えの年1回しか収穫できません。
収穫後は連作障害を避けるために、2年間は同じ土地で栽培できなくなります。
また、年収1,000万円を稼ぐためには、じゃがいもの栽培に適した土質や気候の場所を選ばなければなりません。
じゃがいもの栽培に必要なものを揃えることで、農家としてスタートを切ります。
しかし、市場にはすでに成功を収め、栽培ノウハウや実績が豊富なベテラン農家のじゃがいもが流通しており、実績も経験もない農業初心者が年収1,000万円を稼ぐ勝算はかなり低いでしょう。
じゃがいもだけで儲けるのは容易いことではないため、農業初心者にはおすすめできません。
まとめ
じゃがいも農家の年収は100万円程度と低く、農業経営には多くのコストや手間がかかるため、年収1,000万円を実現するのはかなり難しいでしょう。たとえ安心安全で品質の高いじゃがいもを作ったとしても、稼げなければ意味がありません。とはいえ、農業で年収1,000万円を稼ぎたい場合はどうすればいいのでしょうか。次回は、小規模農家にもチャンスがある秘策を紹介するので、乞うご期待!
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