農家が栽培コストを削減するには?農薬や人件費の削減方法を解説

燃料費に加えて、肥料や農薬が値上がりしており、農家の対策として栽培コストの削減を考えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、栽培コストを削減するための方法を知りたい方に向けて、農薬や人件費を削減する具体的な方法を解説します。
また、家庭菜園の栽培コストを削減する方法も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
農家の生産コストの現状を知ろう

栽培コストを削減する方法を解説する前に、政府の考えや農家の生産コストの現状を確認しておきましょう。
農林水産省は、生産者の所得を確保する手立てとして、生産コストの縮減を挙げています。
国が対策するだけでなく、農業の現場でも生産工程の見直しや生産コストの削減に取り組む必要性を挙げています。
農林水産省が提言しているアプローチ方法は以下のとおりです。
①低価格な資材・機械等の導入 ②資材利用の効率化 ③省力化技術の導入による労働コストの低減 ④規模拡大・共同化・汎用化等による機械や施設の稼働面積の向上 ⑤経営上の工夫によるコストダウン ⑥生産性(収量)の向上による生産物当たりのコストの低減等があり、こうした様々な観点から取組の可能性を考える必要がある。 |
具体的には、新技術や資材の導入実証、マニュアルの作成、低価格の資材の使用、機械や施設の効率的な利用などがあります。
では、米農家を例に生産コストの現状を確認してみましょう。
生産コストの現状
農林水産省の「品目別生産コスト縮減戦略~生産現場の取組のヒント~」によると、米農家の生産コストは10aあたり約12万円となっています(10a=約300坪=1反)。
その内訳は以下のとおりです。
品目 | 販売農家平均 | 構成比 |
種苗費 | 3,851円 | 3% |
肥料費 | 7,987円 | 7% |
農業薬剤費 | 7,100円 | 6% |
光熱動力費 | 3,788円 | 3% |
土地改良及び水利費 | 5,847円 | 5% |
賃借料及び料金 | 1万3,353円 | 11% |
農機具費 | 2万2,258円 | 19% |
その他物財費 | 1万2,426円 | 10% |
労働費 | 4万1,995円 | 35% |
合計 | 11万8,605円 |
労働費は全体の約4割を占めており、次いで多いのが全体の約2割を占める農機具費でした。
肥料費と農業薬剤費を合わせると全体の約1割を締めていることが分かります。
同資料によると、作付面積の規模が大きいほど生産コストを安く抑えられると結論付けています。
しかし、借地率の上昇の影響から緩やかな減少となっており、必ずしも規模を大きくすることが生産コストの削減につながるとは言い切れないようです。
農家が栽培コストを削減するために必要な考え方
栽培コストは何をどこで育てるのかで必要な費用は変わります。
例えば、冬に農業用ハウスを利用して栽培する場合は暖房を使用して夜間温度を上昇させる必要があり、電気代や燃料費の負担が増えるでしょう。
コストをかけずに使用量を減らすという考え方がありますが、作物の生長の遅れや病害虫の被害の拡大によって収量が減少し、売上が減るリスクがあります。
一方で、作物の品質を維持しながら栽培に必要最小限のコストをかけるというのも一つの考え方です。
ただし、必要最小限のコストの限界値を見誤れば減収につながりかねません。
このように、栽培コストを切り詰めれば良いという単純な話ではなく、品質を維持しつつ最小限のコストで抑えるという考え方を持つことが大切です。
農家が栽培コストを削減すると得られるメリット
農家が栽培コストを削減して得られるメリットは、詳細なデータ分析によって必要最低限の使用量やコストを的確に把握できるようになることです。
何にどのくらい使用し、いくらかかるのかが分かれば、肥料や農薬の無駄をなくせます。
費用対効果を出して分析と改善を繰り返すことで不要なコストを削減できれば、売上や収益の向上につなげられるでしょう。
PDCA(PLAN:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)を回すことで、農業経営を改善させる仕組みを定着させられます。
肥料や農薬を節約する方法3つ

ここからは、農家が栽培コストを削減する具体的な方法を解説します。
まずは、農薬の節約方法から確認しましょう。
1.低価格な肥料や農薬を選ぶ
低価格な肥料や農薬を選ぶことで節約が可能です。
肥料や農薬は作物の栽培に不可欠なものであり、使用量を減らすとコストは下がりますが、作物の生長が遅れたり病害虫が多く発生したりするリスクが高まります。
農薬にはさまざまな種類があり、有効成分の含有量や使用に適した面積が異なるため、圃場に合ったものを選ぶことが大切です。
農林水産省が提供する「農薬登録情報提供システム」を利用すれば、登録済みの農薬を検索できます。
2.病害虫抵抗性品種を導入する
病害虫抵抗性品種を選ぶことで農薬の使用量を減らせます。
病害虫抵抗性とは、作物の生長を阻害するウイルスや細菌などの病原体に侵害されないことです。
病害虫に抵抗力がある品種を導入すれば、農薬を散布する必要がなくなる、抵抗力がない病害虫にのみ効果のある農薬に切り替えられます。
農薬の使用量が減れば農業薬剤費を抑えられる上に、土壌への負荷も減って作物に良い影響をもたらすでしょう。
3.病害虫の特性を踏まえて、適した時期に防除対策をする
病害虫の特性を把握したうえで防除にベストな時期に対策することも重要です。
病害虫の発生時期は毎年同じではなく、その年の気温や湿度、土壌の栄養状態、栽培方法などによって変わります。
毎年同じ時期に防除対策をしているなら、見直す価値があるでしょう。
圃場の観察を徹底し、病害虫の発生を早期発見できるように注意してみてください。
また、農林水産省が発表する「病害虫発生予察情報」も参考にすると良いでしょう。
機械化で人件費を削減する方法2つ

IT技術やドローンを活用した農作業の機械化は、人件費を削減する方法として有効な手段です。
ここでは、機械化で人件費を削減する方法を解説します。
1.農業経営の規模に合わせて農業機械を導入する
農業機械は圃場の広さや土壌の質に合うものを導入しましょう。
例えば、米農家であれば苗を育てる育苗機(いくびょうき)や田植え機、農薬を散布する動力防除機、稲刈り機、籾摺り機(もみすりき)などの機械が必要です。
農業機械と聞くと、数百万円~数千万円する大型機械をイメージする方もいるかもしれません。
しかし、圃場が20aのように小規模な場合は、小型の草刈り機と耕運機があれば対応できるでしょう。
圃場の広さに合った農業機械を購入すれば、初期費用を大幅に抑えられます。
新品の購入が難しい場合は中古の農業機械を選ぶ
農業機械の購入費用をできるだけ安く抑えたい場合は、中古の農機具が狙い目です。
中古の農業機械なら新品で購入するよりも大幅なコストダウンが可能です。
ただし、メーカー保証がなく、購入後に故障する場合もあるため、修理費が発生するリスクが高いことも把握しておきましょう。
25~35馬力のトラクターがおすすめ
トラクターの導入を考えているなら、25~35馬力の車種を選びましょう。
国内のトラクターは25~35馬力が主流とされており、小規模な圃場であれば25馬力で十分足ります。
また、35馬力あれば、さらに広い圃場での作業にも対応できます。
農林水産省が公表した「新たな品種・生産技術の開発・保護・普及方針」によると、30馬力のトラクターの作業可能面積は20~23ha(ヘクタール)で、実際は1台あたりの利用面積の平均は1.2haでした。
作業可能面積を超える大型のトラクターを使用すると作業ロスが生まれやすくなるので、自身の圃場の広さに合うトラクターを検討してみてください。
参考:新たな品種・生産技術の開発・保護・普及方針|農林水産省
2.農業用ドローンを活用する
農業用ドローンを活用すれば人件費の削減が可能です。
農業用ドローンは農薬や肥料の散布、上空からの農地の撮影、データの収集に対応できます。
カメラを搭載した農業用ドローンを導入すれば、生産者がこまめに圃場を訪れなくても作物や圃場の様子をドローンが撮影した画像で確認できます。
画像からは作物の状況が分かるので、生育状態が悪い場所にだけ肥料をまく、農薬を散布するという臨機応変な対策ができるでしょう。
ただし、ドローンの導入には約100~300万円の初期費用と、年間10万円以上の維持費が発生します。
導入するドローンの種類によっては資格の取得や、国土交通省への申請が必要なケースもあるため事前に確認してから導入を決めましょう。
農業用ハウスを省エネ化する方法3つ

農業用ハウスの消費エネルギーを減らすことができれば、栽培コストの削減につながります。
ここからは、すぐに実践できる省エネの方法を解説します。
1.LED照明を設置する
農業用ハウスの省エネ化に効果的な方法は、電気寿命が長いLED照明を設置することです。
LED照明と蛍光灯、白熱電球の電気寿命と発熱効率を一覧にしました。
照明の種類 | 電気寿命 | 発熱効率 |
LED照明 | 約4万時間 | 100~150lm/W |
蛍光灯 | 約6,000~1万2,000時間 | 60~110lm/W |
白熱電球 | 約1,000~2,000時間 | 10~20lm/W |
LEDは電気寿命が長く、買い替えの頻度を減らせます。
また、発熱効率が高く、消費電力が少ないため光熱費の削減が可能です。
2.内張りカーテンを設置する
農業ハウス内に内張りカーテンを設置することで、次のような対策ができます。
- 遮光
- 遮熱
- 保温
- 吸湿
- 透湿
カーテンの機能は組み合わせる層によって変わります。
例えば、遮光と保温の2層にすると、ハウス内の暖かい空気が外に逃げるのを防げるため、暖房機器の電気代や燃料費を削減できます。
内張りカーテンを設置する場合は、栽培する時期や品種の特性に合わせて選ぶと良いでしょう。
3.空調システムを設置し、定期的にメンテナンスをする
空調システムを導入すれば、ハウス内の温度と湿度の管理がしやすくなります。
ハウス内の環境は作物の生長に大きく関わるため、温度と湿度の管理を徹底することが大切です。
空調システムを導入することで、ハウス全体の温度と湿度を均一に保てるようになります。
他には、エアコンを複数台設置して管理する方法もありますが、温度や湿度にムラができやすく、場所によっては作物の生長に差が出てしまうかもしれません。
空調システムは初期費用こそかかるものの、作物を育てやすい環境を整備するために有効な手段といえるでしょう。
家庭菜園の栽培コストを削減する方法3つ

家庭菜園で化学肥料や農薬を使用しない作物を育てたいという方も多いでしょう。
しかし、肥料や農薬を使わずに栽培するのは非常に手間がかかります。
例えば、作物に害虫が付いたら手で取り除いたり、作物の生育状況をこまめに確認したりする必要があります。
そこで、家庭菜園の栽培コストを削減する3つの栽培方法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1.再生栽培
再生栽培とは、スーパーで購入した野菜の一部を利用して栽培する方法です。
一般的に、リボーンベジタブルを略してリボベジとも呼ばれています。
再生栽培は種や苗を購入する必要がないため、栽培コストは安く済みます。
再生栽培の方法は、空のペットボトルを容器にして水を張り、大根や人参、豆苗などのヘタを水に浸し、あとは水を変えながら生長するのを待つだけです。
2.水耕栽培
水耕栽培は、水と液体肥料だけで作物を栽培する方法です。
土の代わりにハイドロボールを用いることから、ハイドロカルチャーとも呼ばれています。
水耕栽培は屋内での栽培が可能なため、病害虫による影響が少なく、無農薬野菜の栽培におすすめです。
水耕栽培を行う場合は、液体肥料が入った水にハイドロボールまたはスポンジを入れ、そこに作物の根を張らせて生長に必要な水と養分、酸素を吸収させましょう。
3.ハーブ類の栽培
ハーブは病害虫に強い品種のため、家庭菜園の初心者でも栽培しやすいといわれています。
鑑賞用として植えるだけでなく、料理の香りづけやスパイス、ハーブティーにもおすすめです。
ハーブの中でも家庭菜園に人気なのは、ミントやバジル、ローズマリー、ラベンダーです。
ハーブは虫よけ効果があるとされているので、野菜や花と一緒に寄せ植えにするのが良いでしょう。
まとめ
農家が栽培コストを削減するためには闇雲にコストを減らすのではなく、必要最小限の使用量やコストを正しく把握することが大切です。
また、人件費を減らすための設備投資も欠かせません。
短期的に見れば経済的な負担は増えますが、長期的に見れば大幅な人件費の削減や生産性の向上が期待できます。
栽培コストを削減したい方は、できることから試してみてください。