就農前の研修者をサポートするための制度として、農業次世代人材投資資金がありましたが、2023年度からは新しい制度に生まれ変わりました。
その一つが就農準備資金です。
就農準備資金は、農業を始める方にとって資金面の手助けとなるでしょう。
今回は、就農準備資金の交付対象者の要件や申請手順などを解説します。
就農準備資金はどんな制度?
就農準備資金とは、次世代の農業者に対して資金面の支援を最長2年間行う制度です。
2022年度までは「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」と呼ばれており、2023年度からは「新規就農者育成総合対策」に名前を変えました。
農業次世代人材投資資金には就業前を支援する「準備型」と、終業後を支援する「経営開始型」の2種類があり、準備型は「就農準備資金」に、経営開始型は「経営開始資金」になりました。
就農準備資金の交付を受けながらアルバイトできる
就農準備資金の交付を受ける場合は、農家に常勤する雇用契約は結べないことが原則です。
就農準備資金の交付を受けている間だけは農業以外の業種で働いたり、無職でいたりするのは現実的ではありません。
ただし、フルタイム勤務でなければ就農できるため、農業の知識やスキルの実践力を身に付けるなら、アルバイトとして経験を積むと良いでしょう。
就農準備資金の交付対象者の要件と受給金額
就農準備資金は、一定の要件を満たした人だけが交付を受けられます。
まずは、交付対象者の要件と受給金額を確認しておきましょう。
就農準備資金の交付対象者の要件
交付対象者の主な要件はこちらです。
- 就農予定時の年齢が50歳未満で、次世代の農業者として強い意欲を持っている
- 都道府県が認めた研修機関で1年以上の研修を受けている(1年かつ概ね年間1,200時間以上)
- 先進農家または先進農業法人の場合、経営主が三親等以内の親族でなく、過去にパート・アルバイト以外の雇用契約を締結したことがない
- 週35時間以上の常勤の雇用契約を締結していない
- 生活費の確保を目的とした給付を受けていない
- 前年の世帯所得が原則600万円以下である
- 研修中のケガや病気に備えて傷害保険に加入している
就農予定時の年齢は、研修終了時点に49歳以下であることが必須です。
前述した要件の他にも、親族が経営する農業経営体に就農する場合や自営就農する場合などにおいて、細かい要件が定められています。
就農準備資金はいくらもらえるの?
就農準備資金は1年につき150万円で、最長2年間交付を受けられます。
ただし、150万円を一度に受け取れるわけではなく、毎月12.5万円が交付されます。
都道府県ごとに予算が組まれており、上限に達すると申請が締め切られる恐れがあるため申請は早めに行いましょう。
就農準備資金の申請は研修機関を管轄する都道府県へ
就農準備資金は研修予定地の都道府県から交付されるため、該当する都道府県の窓口で申請手続きを行う必要があります。
就農の予定場所と異なる都道府県の研修機関で研修を受ける場合は、全国農業委員会ネットワーク機構(全国農業会議所)から交付を受けることも可能です。
いずれにしても、研修予定地の都道府県の窓口に就農準備資金の申請を行いましょう。
就農準備資金を申請する手順
就農準備資金を申請する手順は、次のとおりです。
- 研修計画の承認申請をする
- 面談を受ける
- 研修計画の承認・不承認が通知される
- 交付申請書を提出する
- 資金が交付される
就農準備資金の申請者は、就農準備資金の募集期間中に研修予定地の都道府県の窓口に研修計画と申請書類一式を提出します。
都道府県の担当者と面談を行い、その後研修計画の承認または不承認の通知が申請者の元に届きます。
研修計画が不承認だった場合は再度計画内容の変更申請が必要です。
承認を受けた場合は指定期日までに交付申請書を提出し、約1カ月後に資金が交付されます。
就農準備資金の申請書類
就農準備資金の申請には以下の書類の提出が必要です。
- 研修計画
- 受講する研修カリキュラム
- 就農5年後の収支計画
- 連帯保証人の印鑑証明書
- 資金返還要件及び連帯保証人内容確認書
- 履歴書
- 離職票の原本
- 誓約書
- 住民票
- 傷害保険証書の写し
- 前年の世帯全体の所得を証明する書類(源泉徴収票の写し、所得証明書の写しなど)
- 身分証明書(運転免許証、パスポートの写し)
- 交付申請書
就農準備資金の交付を受けるためには、研修計画を提出して承認を受ける必要があります。
研修計画には、農業を始めようと思った理由の他に就農の希望地や予定時期、就農形態などを記載する項目もあるため、就農後のビジョンを明確にしておきましょう。
交付申請書は、交付期間や交付申請額などの必要事項を記入して都道府県の窓口に提出します。
研修計画や交付申請書は、農林水産省の公式ホームページからダウンロードできます。
ただし、都道府県によって国で作成した様式と異なる場合もあるため、研修予定地の都道府県が指定する様式がある場合はそちらを優先しましょう。
就農準備資金を返還しなければならない場合がある
就農準備資金の交付後であっても、場合によっては返還の義務があります。
就農準備資金の一部または全額を返還しなければならない主なケースは次のとおりです。
- 交付対象者の要件を満たさなくなった
- 研修を途中で中止または休止した
- 研修終了後1年以内に就農しなかった
- 交付期間の1.5倍の期間または2年間以上就農しなかった
就農準備資金を返還する状況にならないためには、実現可能な計画を立てましょう。
まとめ
就農準備資金はいくつかの要件を満たす必要がある上に、交付後にも研修や就農で求められる条件をクリアしなければならないため、簡単に交付してもらえる制度とはいえません。
就農準備資金の交付を目的にすると農業経営に失敗する恐れがあるため、まずは将来のビジョンや収支計画を明確にすることから始めましょう。
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